
YOASOBI(ヨアソビ)は、「小説を音楽にする」というコンセプトで活動している男女2人組の音楽ユニットです。
メンバーは、コンポーザーのAyaseとボーカルのikura。
彼らの音楽は、強烈なメッセージ性と感情的な深さを持ち合わせ、日本だけでなく世界中で注目されています。
YOASOBIは、2019年10月1日に結成して、配信限定のシングル曲「夜に駆ける」でデビューしました。
約半年後の2020年4月に、LINE MUSICの月間ランキングで初の1位になります。
ショート動画アプリ「TikTok」や「YouTube」などで若い世代の支持を得て爆発的に広がっていき、現在のような注目を集める音楽ユニットに成長してきました。
2023年3月27日、コラボプロジェクト『はじめての』第4弾楽曲「セブンティーン」が配信スタートとなりました。
今回の記事では、コラボプロジェクト『はじめての』とは何か、そして「セブンティーン」の歌詞の意味や、原作となった小説についてもくわしく解説していきます。
Contents
YOASOBI NOVEL INTO MUSIC 『はじめての』
『はじめての』とは
文芸の最前線で活躍する4人の直木賞作家(島本理生、辻村深月、宮部みゆき、森絵都の4人)がまずはYOASOBIのためにそれぞれ短編を書き下ろしました。
(こちらの作品は、小説集『はじめての』として2023年2月に水鈴社から刊行。)
YOASOBIはこの4編をもとに楽曲をつくり、順次発表していく、というプロジェクトが『はじめての』の全様です。
小説のテーマは4人共通で、「はじめて〇〇したときに読む物語」。
島本理生 著『私だけの所有者』の副題は「はじめて人を好きになった時に読む物語」。
辻村深月 著『ユーレイ』の副題は「はじめて家出したときに読む物語」。
宮部みゆき 著『色違いのトランプ』の副題は「はじめて容疑者になったときに読む物語」。
森絵都 著『ヒカリノタネ』の副題は「はじめて告白したときに読む物語」。
このように、四人四様多彩な「はじめて」を巡る物語が集まりました。
楽曲の配信
2022年2月16日 配信リリースの第一弾楽曲は「ミスター」。
原作は島本理生『私だけの所有者』です。
第二弾楽曲「好きだ」は、2022年5月30日に配信リリースされました。
こちらの原作は、森絵都『ヒカリノタネ』。
「海のまにまに」は、第三弾楽曲として2022年11月18日に配信リリース。
辻村深月の『ユーレイ』が原作です。
プロジェクトのラストを飾る第四弾楽曲は、2023年3月27日配信リリースされた「セブンティーン」。
原作は、宮部みゆきの『色違いのトランプ』です。
YOASOBI 「セブンティーン」
直木賞作家・宮部みゆきの小説を原作をもとに制作されたYOASOBIの「セブンティーン」は、17歳の少女の複雑な感情を綴った楽曲です。
疾走感あふれるメロディに乗せて歌われる、歌詞の意味を紐解きます。
宮部みゆき『色違いのトランプ』
原作は、「はじめて容疑者になったときに読む物語」をテーマに、並行世界で起きたテロ事件の関与を疑われて捕われた愛娘を救うため、父親が単身でもう一つの世界へ向かうというストーリーとなっています。
小説では父親の宗一が主人公ですが、「セブンティーン」の主人公は17歳の娘・夏穂です。
宮部みゆきのこの短編では、そうした17歳の、ただしちょっと普通ではない女の子の心の内と直面する物語が描かれています。
セブンティーンの歌詞と意味
(「 」内は歌詞を表しています)
並行世界は「鏡写しかのような瓜二つの世界」で、片方の世界に住んでいる人は「同じ姿形」をしてもう一方の世界にも存在します。
それぞれの世界にいる「二人の私」は、外見は同じでも「中身は真反対」です。
主人公は自分自身と世界とのミスマッチにずっと違和感を抱いていました。
「赤は赤に黒は黒に戻るの」というフレーズで示されるのはトランプです。
赤と黒の“色違いのトランプ”が同じようでいて決して同じではないように、「二人の私」も本当に在るべき場所があると考えています。
しかし、向こう側の世界のあなたも「どこに居たとしても私は そう世界で一人のオリジナル」だから、自分に自信を持って生きてほしいと願っているのです。
主人公は「帰り道を交換しよう」、つまり二人の私を入れ替えることを画策。
こちらの両親との別れは寂しいものの、在るべき場所に戻って世界を救うのだという堅い決意が彼女を突き動かしています。
「こんな乱暴な私をずっと愛してくれてありがとう」という感謝の言葉は、入れ替わる前の自分の世界の両親に向けて発せられた言葉。
あちらの世界に行っても自分は「あなたの唯一無二のオリジナル」。
この別れで親子の絆まで失われてしまうわけではないから、いつまでもあなたの娘として「誇らしく生きるよ」と伝えているのです。
まとめ
YOASOBIの「セブンティーン」は、自分自身の存在を肯定し思い描くハッピーエンドを目指して行動することの尊さを教えてくれる楽曲です。
ぜひ原作小説『色違いのトランプ』も合わせてチェックして、宮部みゆきとYOASOBIが作り上げた奥深い世界に浸ってください。