2024年1月24日、IU(アイユー)の新曲『Love wins all』のMVが公開され、韓国だけでなく、世界の音楽ファンの間で話題を集めました。
出演はIUのほかに、BTS（防弾少年団）のテテ。
このMVの中でテテは歌うことなく、一言もセリフを発しません。
2人の男女（テテとIU）が描く美しくて悲しい物語は、一本の映画を観想しているかのような錯覚を味わわせてくれます。
今回はその『Love wins all』のMVについて、深く考察していきます。
Contents
BTS テテ出演「Love wins all」について
IU簡単プロフィール
『Love wins all』を公開したIUは、韓国のシンガーソングライターであり、女優も務めるエンターティナーです。
韓国で「国民の妹」と称されるほどの、絶大な人気を誇る国民的歌姫として知られています。
「IU」という活動名は、「I」と「You」を掛け合わせた造語であり、『あなたと私が音楽で1つになる』という意味が込められているそうです。
「Love wins all」 歌詞の和訳からの考察
歌詞の一部を和訳してみました。
「私を 連れて行ってくれない？
私のちっぽけな想像力じゃ思いもつかないようなところに
遠く遠く、そう、例えば地球から火星くらい遠く
一緒に行ってくれるでしょ？そこがどこだろうと果てない寂しさ」
この冒頭部分からすでに、切ない結末（終焉）が予想されます。
「나와 함께 겁 없이 저물어줄래?」という歌詞が出てくるのですが、直訳すると「怖がらないで 暮れてくれる？」となります。
この部分の解釈は、「暮れる」＝「逝く」ではないかと考察しました。
「Love wins all」（愛はすべてに打ち勝つ）は、ハッピーエンドなのでしょうか。バッドエンドなのでしょうか。
BTS テテ出演「Love wins all」MV考察
韓国の大ヒット映画「コンクリート・ユートピア」で知られる、先見の明のあるオム・テファが監督したこのMVは、本当に美しい映画の世界に私たちを誘います。
黙示録後の未来を背景に、お互いに愛し合いながら生き残るために戦うカップルの物語です。
片目の見えないテテと喋ることができないIU
ミュージックビデオは、短いディストピア（反理想郷・暗黒世界）SFスリラー映画です。
IUとテテは、キューブのような形をしたキラーロボットから逃げています。
テテの右目は白く濁り、見えていないことを表し、IUの唇のピアスもまた、彼女が言葉を発することができないことを意味しているのです。
追いかけてくるキューブ
2人を執拗に追う「キューブ」の正体がファンの間で最も意見が分かれていたところです。
ファンは「世界を占領した外界勢力だ」、「ウイルスに感染したゾンビだ」等々、多様な反応を見せました。
MVの監督であるオム・テファが語ったところによると、「キューブ」は主人公（障害者）に向けた差別を意味し、ひいては私たちの日常で蔓延した各種差別と抑圧などを意味するとのこと。
ビルの外には、二人を追うキューブ以外にもたくさんのキューブが存在していました。
幸せが映るビデオカメラ
ビデオカメラの映像に映し出されている2人は、傷や汚れはなくなり、朽ちた風景も平和な世界へと変わり、きれいな姿で美味しい食べ物を堪能しています。
前出のオム監督によると、ビデオカメラのレンズは、すなわち「愛のフィルター」を意味するとのことです。
二人はウエディングドレスとタキシードを着て、「愛のフィルター」を通して歌い、プリクラを撮り、これまで日常では出来なかったことを一緒にしながら、つかの間の幸せを味わいます。
最後のシーン
幸せな時も束の間に再びキューブに追われる二人。
テテの思いつめたような反撃シーンも息を飲みましたが、それ以上に目を奪われたのがこちらのシーンでした。
真っ赤になったキューブが迫ってきます。その先には疲れ切った二人の姿。
その時、後ろからテテを抱きしめていたIUが、テテの見える側の目を隠すのです。
恐ろしいものを見なくて良いようにと、愛する人を優しく包み込むこのシーンに、愛に勝るものはないのだというタイトルの言葉の意味を、深く感じられたような気がしました。
キューブに追い詰められた二人の身体は消滅しますが、同時にカメラには二人の身体が浮き上がる様子が映し出されています。
そして二人の着ていた抜け殻のようなドレスとタキシードが服の山の上に落とされ、物語は幕を閉じるのです。
監督によれば、IUとテテが浮かび上がるビデオカメラの中のシーンは、「あらゆる抑制と圧迫から抜け出して自由に飛んでいけること」を意味しています。
つまり、2人は差別や抑圧（キューブ）から開放されて、最後には愛（ドレスとタキシード）だけが残る＝愛はすべてに打ち勝つ（Love wins all）というハッピーエンドだったというのです。
まとめ
女優でもあり歌手であるIUの演技力はもちろん、テテのすばらしい演技も見ることができるMVでした。
最後に、製作スタッフの言葉をお借りしてこの記事のまとめとさせていただきます。
「嫌悪のない世界で全ての愛が勝つことを、誰も傷つかずにこの曲の意味が伝わることを、心から願う。」
